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Sulumi/エレクトロニカ・ミュージシャン、エレクトロニカレーベルshanshui Records代表

1982年遼寧省鞍山市生まれ。本名、孫大威。
Sulumiは、あるゲームキャラクター名のアルファベットを適当に抜いてできた名前。特に意味はない
2002年PANDA TWINの名前で『The Man Who Hated The Shadow』リリース
2003年Sulumiの名前でファーストアルバム『air inhibition of water』リリース
同年、中国国内初のエレクトロニカ専門レーベルshanshui Recordsを開設。各国のミュージシャンによるコンピレーションアルバム『V.A/Landscape』リリース
その後、『Visit-Partial Works: Remix』、『Stereo Chocolate』、『i know someone will look into my eyestomorrow』、 『What Has Happened to Me in This World』リリース
2010年『Chaotic Tänze Der Funktion』(EP、CD)、『The Heaven』リリース
2012年『Call Black White』リリース
その他、海外のミュージシャン、レーベルとのコラボレーションや国内外でのライブなど精力的に活動

http://site.douban.com/sulumi/
http://jp.myspace.com/sulumi

「中国のマーケットとは賢くつき合う」 R:おそらく多くの日本人が「中国にもエレクトロニカってあるの?」という認識でしかないと思うのですが、ご自身が初めてエレクトロニカに触れたのはいつですか?

S:2000年に知り合いの日本人に聞かせてもらったのが初めての出会いです。それまで聞いたことのない音源だったので、なんだかよく分からなかったんですよね。その後、その音源を数ヶ月、聞き続けました。次第に、もっと新しい音源に触れるべきだと感じ始めたんです。ちょうどその頃、パソコンを購入したので、実験的に音作りを始めました。

R:そして、エレクトロニカの世界に入っていくわけですね。どのようにして、自分の音作りをしていったのですか?

S:エレクトロニカに対する考え方や音作りの方法は、自分自身で探っていったといえますね。インターネットで海外のレーベルを調べ、音を聞いて、聞いて、聞いて……。それは、例えば一杯の飲み物のようなものです。飲まなければ、それがどんな味なのかわからない。飲んで初めてその味を知ることができる。ひたすら研究し、次第に音と質感を知るようになっていったんです。

R:そして、2003年に中国国内初のエレクトロニカ専門レーベルshanshui Recordsを設立するわけですが、当時、どうしてレーベルを立ち上げようと思われたのでしょうか?

S:エレクトロニカに接すると同時に、海外の多くのレーベルに触れました。レーベルとは何なのか。個人の小さな会社であり、自分自身の考えを体現できる理想の国のようでもある。それって、すごくかっこいいし、より自由に自己表現ができると思ったんです。

R:中国でのエレクトロニカの現状はいかがですか?ここ数年、エレクトロニカを始める人が増えているのではないですか?

S:欧米や日本のエレクトロニカ市場が大型スーパーマーケットだとすると、中国はまるでキオスクのような小さな売店みたいな感じですね。知らない中国人が圧倒的多数を占めているという状況です。確かに、最近、エレクトロニカを始める自称ミュージシャンが増えてきていますが、ちょっとかじっただけで「お、俺でもできる」と勘違いをしているんです。プロとして音楽に携わるというのは、そういうことではない。知識だけではいい音楽はできないんです。ただ、私は中国のマーケットは別に重要視していないんです。

R:重要視していない?

S:重要視していないというか、中国のマーケットとは「賢く付き合っていきたい」といったらいいでしょうか。環境や人々の需要と大きな関係があると思うのですが、中国のマーケットはまだ未熟といえます。その部分には、時間を割きたくないんです。自分の音楽をCDにして、聞き手に届けたい。海外では、音楽ができるとそれに見合うだけの反応が返ってきます。ミュージシャンの想いや存在がちゃんと伝わるんです。でも、中国では、人々が自覚をしない限り、そのような共感は得られないと思っています。私はただ、真剣に音楽をつくり、レーベルを育てていきたいだけなんです。

R:では、ご自身は音楽に何を込めているのでしょうか?また、Sulumiさんにとって、エレクトロニカとは何ですか?

S:その時々の私の心情にもよるのですが、「感情や日常の出来事」を音にする場合もありますし、単なるシンプルな音源の場合もあります。それ以外、特別なモノは何も入れていないですね。私にとってエレクトロニカとは、とんでもなく大きな銀河世界のようなものです。

R:エレクトロニカに触れる以前は、どのような音楽に触れていたのですか?バンド活動もしていたそうですね。

S:小学生の時に、日本の音楽でいうと初めてB’Zを聞きましたね。その後、中学一年生で初めて中国ロックに触れました。当時、手に入るロックはすべて聞いていたと思います。その後、1997年にギターを習い始めたんです。高校の休暇期間中、北京のおばの家に寝泊まりしてはライブハウスに通っていましたね。沈陽の音楽学院で音楽の勉強をしたのですが、学校での勉強は想像していたのとは違って非常につまらなくて、一年ほどで退学しました。その後、北京に移り住もうと決めたんです。北京に移り住んでからは、日本人との交流もあり、日本のロックやパンクをはじめ、ネット上であれこれ調べて世界各国の音楽を聞くようになりました。雅楽や沖縄民謡、もちろんクラシックやジャズなども。バンド活動を始めたんですが、方向性などを見失い、あれこれ迷っていた時にエレクトロニカに触れたんです。ある意味、エレクトロニカが私を救ってくれたといえるかもしれません。 「身近な人たちに紹介し、開花してほしい。真の交流」 R:ご自身の音楽の中には、ゲームボーイを使った音源が入っていたり、また、PSPを常に携帯されていたり、Sulumiさんのスタジオにも日本の玩具がいくつか飾られています。日本の文化はご自身の生活の一部なのでしょうか?

S:幼い頃に接したモノは、大人になってから広げることも、狭めることもできますよね。私は前者で、今でも日本の漫画やテレビ番組、ゲームが好きです。恐らく、同世代の人間だったら、皆好きだと思いますよ。ただ、私は中国で生活し、中国の環境の中にいます。ですから、日本とは違う環境で制作しています。私はアジアの文化が好きなんです。

R:また、音楽機材もそうですが、CDやレコードが山のようにありますね。中国ポップ、J-POP、ジャズ、クラシック、中国の古典音楽、沖縄民謡と世界各国様々な音楽に触れていらっしゃるようですが、それはやはり、ご自身の中に様々なジャンルの音楽を聞きたい、吸収したいという思いがあるからなのでしょうか?

S:その時々の気分や時期によって、聞きたい音楽が変わるということだと思います。ただ、海外のミュージシャンのライブを見たり、音楽を聞いたりするといつも感動するんですよね。それは、彼らが本当に「心」で音楽をつくっているからなんでしょうね。

R:国内のミュージシャンとの付き合いだけでなく、shanshui Recordsにも日本、スウェーデンのミュージシャンが所属しています。また、シンガポール、マレーシア、アメリカなど、他国のミュージシャンとも活動をされていますね。

S:なにより、彼らの音楽が好きなんです。彼らの音楽を、私の身近な人たちに紹介したい、そして、どんどん花開いて欲しいと願っているんです。これこそまさに、真の交流といえるのではないでしょうか。日常に彼らの音楽があるだけで、孤独を感じることはないんです。

R:そして、2007年6月からshanshui Recordsの仲間とエレクトロニカを紹介するラジオ番組も開設されましたね。(現在終了)それはやはり、中国の人たちにもっとエレクトロニカを知って欲しいという思いからなのでしょうか?

S:私がやっていることは非常に基本的なことで、音楽やアートを生活の一部にし、普及させ、交流させたい、ただそれだけなんです。

R:また、4月には、shanshui Records傘下に新レーベルKILL CLUBを設立し、アルバム『KILL CLUB#001』がリリースされました。

S:音楽をより系統立てた結果生まれたレーベルです。自分自身のコンセプトをよりはっきりさせたいと思ったんです。聞き手にも、より簡単に同類の音楽が探せるようにね。数あるレーベルが同じような音楽ばかり発表していても、あまり意味がありませんからね。

R:今年2008年は、shanshui Recordsがスタートして5周年ですね。6月には、約一ヶ月の初の国内ツアーが終了しました。いかがでしたか?

S:今回、ツアーで訪れた場所のほとんどが初訪問だったので、旅行みたいな感じでしたね。行った先では、ファンの熱い声援を感じました。プレゼントをもらったり、私たちもグッズをプレゼントしたりね。

R:では、今後、shanshui Recordsはどのようなレーベルになっていくのでしょうか?

S:今後のことは、誰にも分かりませんよね。ただ、今は目前のことを片付けていきたいだけですね。

R:今年、2008年下半期の予定は?

S:レーベルに所属する日本人ミュージシャン、USKのアルバムリリースと年末にレーベル5周年ライブを予定しています。



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